Hans J Wegner
(1914-, Danmark)

Jakkens Hvile/PP250 Valet Chair,1953

Solid pine frame with solid teak seat and brass fittings

Through its novel form, this design directly addresses one
of the age-old functions of the chair. The seat can be lifted to provide
a rail to hang trousers over and underneath it there is a small storage space.




独身ですか?
どうしていきなりこんなことを聞くのかって?
この椅子は人が座る椅子ではないんです。

背がおもしろい形をしていますね、何に見えますか?楽器のようにも見えますが、実はハンガーなんです。座面は手前に引くと直立してズボン掛けになります。そしてその下には三角形の小物入れが隠されています。

独身者が家に帰ってきます。まずは、背広を椅子の背のハンガーに。ズボンのポケットから財布、小銭、部屋の鍵を取り出して小物入れに。そしてズボンは座に掛けます。だから、人が座る椅子ではないんです。

なぜウェグナーは、こんなにも日常的な要求を、こんなにも美しく表現できるのでしょうか・・・。
この椅子は、バレットチェア(valet=従者)あるいは、バチェラーチェア(bachelor=独身者)と呼ばれています。




1951年、当時のデンマーク国王フレデリック9世が、4本脚の模型として製作されたこの椅子を見て気に入り、早速注文しました。しかしなかなか手元に届きません。翌年のキャビネットメーカーギルド展に行った際、まだ納入されないことをウェグナーに催促しましょうか、と従者が言ったのに対する国王の答はこうでした。

'I shall reserve that pleasure for myself.'(楽しみに待つとしようか)

さすが王様、なんて素敵な答なんでしょう。
私もちょうど50年後の2001年末に、ウェグナーがデザインしたテーブルを発注し、届いたのは今年の5月、約半年間王様気分を味あわせていただきました。きれいな テーブル なんですよ、きっとあの 入れ墨のお兄さん がやすりをかけたにちがいありません。

国王のもとにバレットチェアが届いたのは、注文から2年後の1953年でした。






'Choice of wood is also something of a fashion.
I don't like to say so, but that's how it is.
Look at The Valet Chair.
I designed it in pine and teak, but Ejnar Pedersen loves maple, so he makes it in maple.
It is so overly beautiful, too.'


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